メディアを騒がせた「性同一性障害」


   ヒトには男女の別(生物学的性別)があり、男(女)性は「自分が男(女)である」と認め、「男(女)として、生きるのが最もしっくりする」と感じている(ジェンダー)。ところが、時には生物学的性別と性の自己認知あるいは自己意識と呼ばれるジェンダー・アイデンティティが一致しないことがある。このような場合を性同一性障害と呼ぶ。

   生物学的性別とジェンダー・アイデンティティが一致しないと、次のような症状が現れる。 自分の生物学的性別を象徴するものに嫌悪感を示したり、取り除こうとする。その結果、「自分の性器は間違っている」「成人になれば反対の性器を持つようになる」「自分の性器はなかったらよかった」と考えたりする。そして、月経や乳房のふくらみなどに嫌悪感を覚える。 反対の性別に強くひかれ、「反対の性別になりたい」と思い、反対の性別の服装や遊びを好む。

   家庭、職場、儀式、社会的人間関係、言葉遣い、身のこなしなど、さまざまな場面で反対の性別として行動することを希望し、実際そのようにする。
   診断は生物学的性別の決定と、ジェンダー・アイデンティティの決定により行われる。

①生物学的性別の決定
生物学的性別の決定は性染色体(せいせんしょくたい)検査、ホルモン検査、内性器・外性器の検査、生殖腺(せいしょくせん)検査などを行い、男女のいずれであるかを決定する。
②ジェンダー・アイデンティティ(性別の自己意識・自己認知)の決定
小さなころからの生活の状況(服装や遊びなど)を詳しく聞き、写真など、具体的な事実を物語るものを見せてもらったり、本人だけでなく、家族あるいは本人と親しい関係にある人たちからも情報を得たうえで、本人のジェンダーを決定する。

   以上から、生物学的性別とジェンダー・アイデンティティが不一致であることを明らかにする。その際、半陰陽(はんいんよう)あるいは間性(かんせい)などと呼ばれる、生物学的性別に異常のあるものは除かれる。職業上の理由や、趣味、嗜好の理由で別の性別を望むものは含まれない。
   生物学的性別は、卵子と精子が受精した際のY染色体の有無によって決定されるが、ジェンダーがどのようにして決まるのかは必ずしも一定の結論が出ているわけではない。
   現在のところ、最も有力な説は次のようなものである。受胎後、胎生期に男女の性器の分化が起こるが、その際、男女それぞれの性別にふさわしい性ホルモンが分泌され、その性ホルモンによって脳にも性差が生じる。この脳の性別化がジェンダーと関係すると考えられている。

   脳の発達の経過中に母親がホルモン投与を受けたり、ストレスにさらされて、ホルモン異常が引き起こされると、脳の性差に異常が生じて、性同一性障害が生じるという説である。 治療は、次の順序で行われる。
   ■第1段階(精神療法)
精神療法では、本人のこれまでつらかったこと、困難、悩みをよく聞き、そして、人生を快適に暮らすためには、どちらの性別で暮らすのがよいのかについて十分な検討を行う。
   精神療法は、後述するホルモン療法や手術療法の前、あるいは継続中、終了したあとにも引き続き行われる。
   ■第2段階(ホルモン療法)
十分な精神療法が行われたのち、身体的、精神的な安定感を得るためにはホルモン療法が必要と判断された場合には、ホルモン療法に進む。男性が女性性を望む時は女性ホルモンを、女性が男性性を望むときは男性ホルモンを投与する。 ■第3段階(手術療法)
十分なホルモン療法にもかかわらず、それまでの治療には限界があり、手術療法が必要とされた時に、手術が選択される。最近では性転換手術とはいわず、性別適合手術と呼んでいる。
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