有機溶剤が人体へ与える怖い影響 


   有機溶剤の長期乱用による身体障害はかなり多彩である。吸引される有機溶剤の種類によって異なるが、有機溶剤の持つ粘膜刺激作用による慢性気管支炎、メチルアルコールによる視神経障害、ベンゼンによる骨髄造血機能の荒廃を症状とする再生不良性貧血、トリクロールエチレンやトルエン、キシレンで見られる肝機能障害、トリクロールエチレンによる急性腎不全などが報告されている。

   n-ヘキサンやトルエンでは四肢のしびれ、脱力、歩行困難、著明な四肢の筋肉萎縮などを呈する多発神経炎がしばしば経験される。トルエンによると思われる著明な小脳失調と視力・視野障害を呈した例の報告もある。
   脳は異常についての報告も多く、シンナー吸引の頻度が高い群ほど低い群に比べて有意に脳波の基礎律動の周波数の徐化が認められ、シンナー依存者に見られる記銘力や計算力の低下などとの関連が指摘されている。

   また長期の有機溶剤乱用者では多くの場合、頭脳のCT検査によって大脳皮質の萎縮と脳室の拡大が証明される。また有機溶剤乱用者に見られた動作時筋肉けいれんは、安静時にはけいれんは見られないが、渦巻き図形を書こうとする際などの動作時に著明なけいれんが見られた。 最後に、有機溶剤乱用による精神障害についてであるが、性格の変化はどの乱用者にも多かれ少なかれ認められる変化であり、
(1)いらいらして落ち着きがない抑制欠如型
(2)無気力でだらしがない無気力弛緩型

という二方向の変化として現れる。
   一人の有機溶剤の乱用者においては、これらの二方向の性格変化が種々の程度に混在して見られるのが普通である。青少年が人格形成の大切な時期に、一度、有機溶剤乱用・依存の悪循環に取り込まれると、現実社会の人間関係の複雑さを回避し、安直に自分の求める効果を与える薬物を唯一の友達のようにして、薬物を摂取することを生き甲斐としていく。その結果、このように特有な性格傾向が助長されてしまい、なかなか社会での適応能力が鍛えられないのである。

   また、20歳を過ぎてもなお、有機溶剤の乱用・依存から脱却できないで、精神病院を受診する有機溶剤依存者の中には、幻視・幻聴等を有する精神病状態を発現しているものも少なくない。
   国立下総療養所に初診した有機溶剤依存症の患者108人において見られた有機溶剤精神病の乱用期間別の比較で、108人の乱用期間は<5年以内>72人、<5~10年以内>22人、<10年~>14人であり、有機溶剤精神病を呈した者の比率はそれぞれ4.2%、31.8%、57.1%であり、乱用期間が5年を越えると幻聴、妄想等を症状とする有機溶剤精神病の比率が有意に増す。
Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

コンテンツ提供 by 介護の安心ガイド